SWSブログ愛読者の皆様、こんばんは。
ベースのYです。
先週、お茶の間の皆様に爽やかな感動を与えた作品
『カエルの王女さま』がついに最終回を迎えましたね~
懐かしの名曲、意外なポップス…数多の楽曲と登場人物が織り成すドラマを通して、
合唱というものに初めて興味を持たれた方が、少なからずいらっしゃったのではないでしょうか。
また、海外ドラマ『glee/グリー』の人気も、合唱人口のすそ野を広げるのに
一役買っているのではないかと思います。
このように合唱というぶっちゃけマイナーな営みに日が当たるのは、喜ばしい限りです。
さて、これだけ書いておいてなんですが、私Yはテレビを持っていないので
上記2作品は全く観たことありません。 いえい。
…しかし、世の中ドラマだけではありません。
合唱や音楽に関わるフィクション作品はそれこそ星の数ほどございます。
ということで本日は、私が最近読んだ小説やマンガの感想をつらつらとしたためたいと思います。
ネタバレは最小限に留めますが、気にされる方は読み飛ばしてくださいませ。
※練習日誌など真面目な内容は私以外のどなたかが追って書いて下さるはずです。
①中田永一『くちびるに歌を』(小学館)
離島の中学校の合唱部を舞台にした、正統派?青春小説です。
毎年秋、NHK全国学校音楽コンクール(通称Nコン)という言わば「合唱の甲子園」(小中高生対象)が
開かれています。その2008年大会、中学校の部・課題曲であったアンジェラ・アキさんの楽曲
『手紙~拝啓 十五の君へ~』をご記憶の方も多いのではないでしょうか。(我々SWSも演奏しました!)
本作では、この『手紙』を歌ってNコン地区予選に臨む中学生たち(と先生)が瑞々しく描かれています。
物語のキーは「手紙」なんですね。合唱部員が、十五年後の自分に向けて、今の自分の言葉で、
それぞれ手紙を書くのです。そこに秘められた思い、悩み…嗚呼青春。
私の中学時代とはかけ離れていますね。
技法として興味深いのは、合唱を文章で表現するその仕方です。
練習風景や演奏の様子、合唱で味わう感動を、文字で表すとこうなるのかぁと頷きながら読んでました。
3時間程度で読めますので、作中の季節とシンクロする今、ぜひご一読を。
②藤井哲夫/かわぐちかいじ『僕はビートルズ』 (講談社・週刊モーニング連載)
先に言っておきますと、合唱を描いた作品は①だけですすみません。
フィクションの題材として合唱はまだまだ未開拓のようです。(逆にご存知の作品を教えて頂けたら嬉しいです)
それでこのマンガですが、かわぐちかいじ氏と言えば『沈黙の艦隊』や『ジパング』といった
骨太な作品が連想されます。あの絵柄でビートルズとは果たして。
実はこの作品、SFなんですね。
現代日本でビートルズのコピーバンドとして活動し、ビートルスを愛してやまない4人の男が、
ある事故によって、ビートルズのデビュー前の日本にタイムスリップ。
そして紆余曲折を経て、まだ誰も知らないビートルズの「盗作」によって、メジャーデビューしてしまう…
彼らとビートルズ、そして音楽の歴史はどうなってしまうのか。
いやぁ熱い展開!
この作品が問うもの、それは音楽とは、創作とは、表現とは何かといった、
芸術に携わる者が避けては通れない命題です。
主人公4人は、それぞれが音楽への思いを持ち、それがゆえに時に対立し、しかし音楽から、
そしてビートルズの魔力から逃れることはできないのです。
私たちは基本的に、創作ではなく演奏の側に立っているかと思います。
しかしそれも間違いなく芸術です。創作と演奏に単純な優劣があるわけでもないでしょう。
うまく言えませんが、何かを伝えたいという狂おしい衝動そのものが、大切なのかなぁとか。
なお、私はビートルズ世代ではなく(当団員のビートルズ・フリークの方からマンガ借りました(笑))、
彼らの楽曲や時代の空気を間接的にしか知りませんが、そんな人でも楽しめる作品だと思います。
当時の音楽業界の内実も描かれていて、興味は尽きません。
③片山ユキヲ『花もて語れ』(小学館・ビッグコミックスピリッツ連載)
(ようやく)最後になりましたが、本作はもはや音楽がテーマですらなく…未だかつてない「朗読」ものです。
主人公は内気な新卒社会人の女の子、彼女が文学作品(童話から小説まで)の朗読を通じて
自己を表現し、聴き手と交流を深める様子を丁寧に描きます。
エピソード完結式で、巻数もまだ少ないので、今からでも抵抗なく読み進められると思います。
あえてこの作品を取り上げたのは、朗読の手法に合唱と通ずるものを感じたからです。
(偶然ですが、当団員の中で読み聞かせのボランティアをされている方もいらっしゃいます)
朗読はまず作品理解から始まるとのこと。丹念に作品を読み込み、自分の中で咀嚼し、
それを声に乗せて表現する…
これは詞と楽譜を読み込み、試行錯誤しながらハーモニーを作り上げていく過程とよく似ています。
似ているというよりむしろ、合唱の練習も、音取りに先んじて詞の朗読や解釈の共有から
始める場合もあります。
私たちは現在、7月7日の慰問演奏に向けて練習の詰めの段階にありますが、
先生に指摘される内容も、音程など以上に「詞の表現」に関わるものが増えてきました。
歌は当然ながら詞を伴いますので、どれだけ詞を聴く人に届けられるか、というのは重要です。
今後の練習に朗読を取り入れるのもアリかなと個人的には考えております。
ということで、長らく駄文にお付き合い頂いた皆様には心より御礼申し上げます。
最後に一言付け加えると、当団は決してこのようなマンガオタクばかりが生息する団体ではございませんので、
ご心配なく見学等々お越しください。 おわり。